コロナ法律相談 回答:小林寛治弁護士
新型コロナウイルスで大きな打撃を受けている、中小企業や個人事業主。どのような悩みを抱え、どう対応していけば良いのでしょうか。読者から寄せられた相談などをもとに、弁護士に聞きました。(聞き手・遠藤隆史)
Q 自動車部品製造工場を経営しています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で製造に必要な部品の供給が止まり、期限までに取引先に商品を納入できません。賠償責任を問われますか。
A まずは取引先との契約内容を確認する必要があります。契約の中に「不可抗力によって納品できない場合は責任を負わない」といった条項がある場合、今回の部品供給の停止が「不可抗力」とみなされる可能性があります。
ただ、不可抗力とみなされるには、代替の部品を調達できる可能性がどれくらいあるか、その代替部品を調達する努力を尽くしたかも問われます。ウイルスの世界的な感染拡大は予期せぬ事態ですので、どうしても代替部品を調達できなかったと判断されれば、賠償責任を問われない可能性が高いといえます。
一方、中小企業同士では口頭での契約で、不可抗力の取り決めをしていないことが多いでしょう。取引先に対して賠償責任を負う可能性が高まりますが、今回のような事情なら責任を回避できる余地は十分にあります。いずれにせよ代替部品の確保がポイントですが、調達費用が割高になっても契約に特段の定めがない限り、増えた費用を取引先に請求できません。
長年取引をしてきた相手なら、しゃくし定規な法律論ではなく、納期の延期や代替部品の調達費の一部負担などを経営判断で認めてくれるかもしれません。思い切って本音で相談してみるべきだと思います。
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こばやし・かんじ 2000年弁護士登録。大阪弁護士会の中小企業支援センター事務局長。MBAの学位を持ち、中小企業法務や事業承継問題に取り組む。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル